第6回 放射光科学賞 (2023年)
谷口 雅樹氏 (TANIGUCHI Masaki)
広島大学 放射光科学研究センター真空紫外領域の光電子分光を用いた固体物理学研究と放射光科学への貢献
谷口雅樹氏は、真空紫外領域の光電子分光を用いた固体物理学研究において先導的な役割を果たした。固体の電気的、磁気的、熱的性質は、その内部に潜む電子状態が支配していると言っても過言ではない。光電子分光を用いてそれらの電子状態を実験的に明らかにすることは、より高い機能性を持つ物質開発への指導原理を得ることができ、大変重要である。谷口氏は、その重要性を最大限に認識し、広島大学において小型放射光蓄積リングHiSORの設立に中心的な役割を果たし、そこに設置されたアンジュレータービームライン全てを光電子分光専用ステーションとした。それらのエンドステーションに固体中の電子の量子状態(エネルギー、運動量、スピン)を高分解能・高効率で計測できるシステムを構築した。
特に銅酸化物高温超伝導体をはじめとする強相関電子系について精密電子構造解析を精力的に行い、顕著な研究成果を多数輩出した。さらに国内外の共同研究を推進し、多くの研究成果を輩出しただけでなく、国内外の若手人材育成にも大きな貢献を果たした。
このように、谷口雅樹氏は、真空紫外領域の光電子分光を中心として放射光科学とコミュニティーの発展に著しく貢献してきた。以上により、谷口雅樹氏は第6回放射光科学賞に相応しいものと認められる。
日本放射光学会
会長 横山利彦