第1回 日本放射光学会高良・佐々木賞
三村 秀和 会員 (MIMURA Hidekazu)
東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻軟X線から硬X線領域にわたる放射光ミラーに関する研究開発
三村秀和氏は、20年あまりにわたり硬X線、および軟X線領域の放射光用X線ミラーの開発と、その応用研究を精力的に進めてきた。三村氏の成果に基づくX線ナノ集光ミラーは、SPring-8やSACLAをはじめとする世界の放射光施設で広く用いられており、X線光学の分野における我が国の主導的な地位の堅持・強化に大きく貢献してきた。
2000年頃から2010年頃に大阪大学で行われた硬X線ミラーの開発については、三村氏はその作製・評価技術を年々向上させ、多層膜ミラーによるsub-10 nm集光など、世界記録を次々と塗り替えていった。またSACLAにおいてはXFELの50 nm集光も達成し、SACLAにおける非線形X線光学研究の発展に多大な貢献をした。
2011年以降に東京大学で行われた軟X線ミラーの開発については、曲率半径数10 mm程度の曲面形状が必要なため、その作製は極めて困難であるが、三村氏は、回転体ミラーという極めて独創的な軟X線集光ミラーを考案して、その加工、計測技術をゼロから開発し、SPring-8において軟X線の100 nm集光に成功するとともに、その後のSPring-8、SACLAにおける様々な利用研究に貢献した。
このように三村氏は、硬X線および軟X線領域の放射光集光技術の研究開発、実用化、それらの波及分野において傑出した業績をあげてきた。以上により、三村秀和氏は第1回日本放射光学会高良・佐々木賞に相応しいものと認められる。
日本放射光学会
会長 横山利彦