第10回 日本放射光学会功労報賞  (2023年)


中村 永研氏 (NAKAMURA Eiken)

自然科学研究機構 分子科学研究所 極端紫外光研究施設

 

  中村永研氏は、分子科学研究所UVSORの共同利用が開始された1984年に着任して以来今日まで合計33年の長期にわたって、ビームラインの高度化と多くの共同利用者の研究を支援してきた。また、あいちシンクロトロン光センターの真空紫外軟X線ビームラインBL7U の分光光学系の調整・最適化から性能評価までを担当し、多大な貢献・活躍をした。
  中村氏は数多くの業績の中で特筆すべきものとして、L字型水冷四象限スリット駆動機構の開発がある。駆動用のパルスモーター軸を全て鉛直方向に配置しながらも、鉛直・水平方向の全開口制御可能な駆動機構を開発し、従来と同等の性能を、数分の1の大きさで実現した。UVSORのような小型の光源加速器では必須の技術であり、偏光磁石ビームラインでの先端的表面薄膜磁性研究、アンジュレータビームラインでの電子状態の精密計測、軟X線顕微鏡によるリュウグウ試料分析等の利用につながった。
  また、世界最高性能の小型放射光源として、大学共同利用研究を通した若手研究者の育成や大学院生の教育にも大きく寄与している。誠実できめ細かい対応でユーザーや施設・研究所スタッフからの信頼も厚い。以上、中村氏の小型放射光ビームラインの基盤技術の開発に尽力し、国内外のユーザー利用を支えてきた実績は、日本放射光学会功労報賞に相応しいものと認められる。

日本放射光学会
会長 横山利彦

2023年 1月