第13回 日本放射光学会奨励賞 (3/3)
三村秀和 会員
大阪大学 大学院工学系研究科 精密科学・応用物理学専攻放射光用高精度X線ミラーの製作とナノビーム応用
三村秀和氏は放射光用高精度X線ミラーの製作と応用において、EEM(Elastic Emission Machining)法を用いた超精密加工法の開発、スペックルのないX線ミラーの開発、X線回折限界を目指したX線ナノ集光ミラーの開発などに大きな成果を上げている。
高輝度放射光X線を扱う光学系は各国で精力的に研究されているが、三村氏は超高精度ミラー作製において、EEM法がX線の散乱を極限まで低減可能な超平滑表面創成法であることを実証するとともに、装置に改良を加えることにより実用的なX線ミラーが作製可能なレベルまで完成度を高めた。また反射ビームに含まれるスペックルの理論的解析を行い、ナノスケールの凹凸形状補正を行う新しい計測法(マイクロスティッチング形状計測法)とEEM加工手法を開発し、初めてスペックルの無いミラーを完成させた。またこれらの技術を用いて世界初のミラーによるX線回折限界集光を実現し、また製作した大開口数のミラーを用いて2007年の時点でビーム幅25nmを得ており、世界的なナノビーム開発競争の先端に位置している。更に、次の目標とされている分解能10nm顕微鏡システムの開発やXFEL用の長尺ミラーの開発などを現在進めている。
以上のように、放射光用高精度X線ミラーの製作と応用における三村秀和氏の研究業績は大きく、日本放射光学会奨励賞に十分に値するものであり、今後の一層の発展を期待するものである。
日本放射光学会
会長 雨宮慶幸
受賞研究報告 学会誌 vol.22 No.2(2009)