第18回 日本放射光学会奨励賞 (1/3)


長坂 将成 会員 (NAGASAKA Masanari)

自然科学研究機構 分子科学研究所

軟X線分光法による分子系の局所解析とその場観測手法の開発

  長坂将成氏は、軟X線アンジュレータ光源を利用した、小さなクラスターの軟X線光電子分光法(XPS)および軟X線吸収分光法(XAS)の研究、さらには液体・溶液のXASの研究において顕著な研究成果を挙げてきた。特に、後者の研究においては、実験技術と化学研究の両面において、長坂氏の独創性がいかんなく発揮されている。すなわち、ごく薄い20nm~1μmの範囲で液体・溶液のサンプル厚を自在にコントロールできる、電極を内包した赤外線・軟X線共用の微小吸収セルを開発し、今まで困難であった液体・溶液の軟X線領域のXASを独自に開発した。そのうえで、電極電圧をパラメータとして、硫化鉄溶液の鉄のL端の吸収スペクトル形状の変化から、鉄の酸化還元反応をその場観測することに成功した。この研究成果は、溶液の電気化学分野への放射光軟X線の有用性を初めてアピールしたものであり、マイルストーン的な価値ある仕事である。
  以上のように、長坂将成氏の成果は高く評価でき、本学会奨励賞を授賞するに値する。

日本放射光学会
会長 村上洋一

2014年 1月

受賞研究報告 学会誌 Vol.27 No.2(2014)