第21回 日本放射光学会奨励賞


上村 洋平 会員 (UEMURA Yohei)

自然科学研究機構 分子科学研究所

超高速時間分解XAFSによる不均一触媒のメカニズムの研究

  上村洋平氏は、大学院時代から一貫して硬X線XAFSによる不均一触媒反応解析を行い、多くの成果を挙げているが、その業績は大きく2つに分けられる。第一は、波長分散型XAFS法(DXAFS)を、PtSnやPdZnのような合金ナノ粒子に適用し、各構成元素の時間分解XAFS測定によって、詳細な速度論的解析に成功したことである。特に、高機能燃料電池触媒として期待されるPtSn超微粒子の酸化過程の解析では、SnがPtクラスターとコア・シェル構造を形成することを明らかにし、反応に伴い表面組成がダイナミックに変化することを直接証明したものとして高く評価できる。第二の業績は、XFELとレーザーを組み合わせたポンプ・プローブXAFS法で、可視光応答型光触媒WO3の光励起過程の詳細を明らかにしたことである。これまで、金属錯体など均一系での実験は知られているが、可視光とX線で侵入深度が異なることから固体への応用はその報告例が無かった。受賞者はWO3微粒子を水中に分散させて試料濃度を下げ、レーザーによる励起を効率よく行うことでこの問題を克服し、XFELの超短パルスX線を用いることで、500 fsの時間分解能のXAFS測定に成功した。これによって、WO3の光励起状態が多段階の過程を経て緩和していること、光励起に伴うWの価数変化に200 ps遅れて構造変化が起こることを明らかにした。
  以上のように、上村洋平氏は多様な時間分解XAFS法で触媒構造変化を追跡し、反応メカニズムを解明した。これらの成果は、放射光科学、および、触媒化学研究両面において独自性の高い優れた業績であり、放射光学会奨励賞に相応しいものである。今後のさらなる発展を期待する。

日本放射光学会
会長 石川哲也

2017年 1月