第23回 日本放射光学会奨励賞


井上 伊知郎 会員 (INOUE Ichiro)

理化学研究所放射光科学研究センター

XFEL光源の新奇特性の開拓とその利用

  井上氏は、XFEL光源の新奇特性の開発、およびその光源を用いた先駆的な実験手法の開拓において顕著な業績を挙げた。特に、最先端のX線光学技術と幅広い加速器技術・X線科学を有機的に結合させながら、 革新的なXFEL光源や実験法の開発を強力に推進した。
  具体的な業績として、井上氏は、 SACLAの波長の異なるダブルパルスXFEL発振技術を利用した、X線ポンプX線プローブ法の開発を行なった。磁場シケインによって時間間隔を変えたダブルパルスを用いて、世界最高レベルの強度 (約1019 W/cm2) のX線と物質との相互作用の様子を、フェムト秒の時間分解能で観測することに成功した。また、プリズム光学素子を利用した高調波XFELの抽出とその利用、 破壊型干渉計測に基づく高強度XFELの空間コヒーレンス特性のマッピング、X線強度干渉現象を利用したフェムト秒電子バンチの時間構造決定など、 様々なアプローチによって、XFEL光源の利用技術・評価技術の開拓を行なった。 さらに最近では、 SACLAにおいて 「反射型セルフシード」 という新しい光学技術の開発と実用化を牽引した。 この結果、XFELのパルスエネルギーをほとんど保ったまま、XFELのスペクトルを約1桁狭帯化することに成功し、 実用的なシーディング技術として、利用運転にも用いられるようになった。
  以上により、井上伊知郎氏の業績は本学会奨励賞に相応しいものと認められた。

日本放射光学会
会長 小杉信博

2019年 1月