第26回 日本放射光学会奨励賞
鈴木 博人 会員 (SUZUKI Hakuto)
東北大学学際科学フロンティア研究所共鳴非弾性X線散乱による強相関量子物質における素励起の研究
鈴木博人氏は、鉄系超伝導体の光電子分光研究で博士の学位を取得後、軟X線共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を用いた物質科学研究の重要性にいち早く注目し、強相関電子系の研究で世界を先導している独国Max Planck研究所のKeimerグループに所属して研究を行ってきた。その中で代表的なものが、ESRFでの銅酸化物高温超伝導体の超伝導ギャップ励起測定、およびPETRA IIIでのSrRu2O6のRu-L3端RIXSによるマグノン分散の観測であり、国際的にも高く評価されている。特にSrRu2O6のRIXS測定では、Ru-L端がテンダーX線領域(~3keV)にあり、X線分光技術が未発達なため、これまでRIXSが行われてこなかったが、本研究ではこのエネルギー領域でのRIXSの最初の成果であり、この新しいエネルギー領域を開拓した意味で高く評価できる。また、今後運用が開始される次世代放射光施設における中心的研究の1つとして大いに期待できる。
このように鈴木博人氏は軟X線RIXSのみならずテンダーX線RIXSで世界を先導する成果を上げている。以上により、鈴木博人氏は第26回日本放射光学会奨励賞に相応しいものと認められる。
日本放射光学会
会長 横山利彦
受賞研究報告 学会誌 Vol.35 No.2(2022)