第2回 放射光科学賞  (2019年)


雨宮 慶幸氏 (AMEMIYA Yoshiyuki)

東京大学大学院新領域創成科学研究科

X線計測技術と放射光X線産業利用による放射光科学への貢献

  雨宮慶幸氏は、2次元X線検出器の開発とそれを利用した小角X線散乱法への展開に関して日本を代表する研究者である。
  X線検出器の開発は、放射光利用において光源性能を遺憾なく発揮するために重要な課題である。雨宮氏は、2次元X線検出器であるIP(イメージングプレート)を用いたX線回折・散乱計測システムの開発に成功した。X線検出器は、それまではゼロ次元、一次元検出器が主流で、二次元検出器は写真乾板であったが、IPは、定量性、ダイナミックレンジ、位置分解のすべてにおいてこれまでの検出器の性能を凌駕しており、第二世代光源および第三世代光源の前半までは、X線回折・散乱実験において世界中の放射光施設で活躍した。特に世界中でタンパク質構造解析が加速度的に実行されたのはIPが利用されるようになったからである。更に、IPの不得意であった実時間測定に適する検出器の開発にも成功している。企業と共同開発したイメージインテンシファイア付きCCD型X線検出器で、主に日本の放射光施設でのX線小角散乱の実時間測定においてしばらく標準的な検出器となった。
  雨宮氏の貢献として、X線検出器の開発だけに留まらず、放射光の位相と偏光特性の制御によるX線光学の基礎と応用に関する数々の成果の他、企業との共同研究を積極的に推進し、具体的な製品開発に繋がる成果を上げている点も高く評価される。具体例として、毛髪のうねりの原因を、マイクロビームを利用した小角X線散乱法によって分子、細胞レベルで定量的に明らかにし、シャンプーなどの新製品開発に導いた成果、時分割二次元極小角X線散乱法により、ナノメートルからマイクロメートルにおけるゴム中のナノ粒子階層構造を解析し、低燃費タイヤの新製品開発に導いた成果などがあげられる。
  以上のように雨宮慶幸氏は我が国の放射光科学の発展に著しい貢献をしており、本学会放射光科学賞に相応しい研究者と認められた。

日本放射光学会
会長 小杉信博

2019年 1月