第17回 日本放射光学会奨励賞 (1/2)


篠原 佑也 会員 (SHINOHARA Yuya)

東京大学大学院新領域創成科学研究科

X線光子相関分光法を用いたゴム中のナノ粒子ダイナミックスの観察

篠原佑也氏は、SPring-8の高輝度放射光源からの高コヒーレントX線を利用したX線光子相関分光法(XPCS)を我が国において本格的に立ち上げるとともに、XPCSに適した検出器の開発を行った。そして、こうして自ら開発したシステムを利用して、高分子を初めとするソフトマテリアル、中でも特に、ゴム中に埋入したナノ粒子のダイナミックスを詳細に観察し、ナノ粒子充填ゴムの動的特性解明に大きな一石を投じた。篠原氏は、XPCS法の開発に先んじて、既にゴムの力学変形時に生じるナノ粒子の空間配置変化について超小角X線散乱測定にも成功しており、XPCS法によるダイナミックスと結びつけることで、実用的ゴムの挙動をミクロな観点から解明した点、産業的に見ても極めて大きな貢献をしたことになる。このXPCS法は、ゴムにとどまらず様々のソフトマテリアルのダイナミックスを解き明かす上でも有用な手法として、我が国の高分子産業界で積極的に利用され始めている。篠原氏は、その先鞭をつけた点で産業界の評価も極めて高い。篠原氏は、様々の国際会議で基調講演を行うなど、その研究業績は非常に高い評価を受けており、今後、先端的小角X線散乱法の開発において一層の活躍をしてくれるものと期待できる。その功績は日本放射光学会奨励賞に十分値するものである。

日本放射光学会
会長 水木純一郎

2013年 1月

受賞研究報告 学会誌 vol.26 No.2(2013)