第7回 日本放射光学会将来計画検討特別委員会議事録


日時:平成14年1月10日(木) 13:45-15:55
場所:東京大学物性研究所6F第2会議室
出席者:上坪(JASRI;委員長)、太田(東大理、学会会長)、尾嶋(東大工)、渡辺 (東北大多元研)、小林(KEK-PF)、松下(KEK-PF)、北村(理研)、 河田(KEK-PF、 学会行事幹事)、小杉(UVSOR)、谷口(HiSOR)、宮原(都立大理)、佐藤(東北大 理)、雨宮(東大工)、木下(東大物性研、学会庶務幹事、オブザーバー)、 西野 学会事務局)
欠席者:下村(原研)、藤井(東大物性研)、菅(阪大基礎工)、坂田 (名大工)、
石川(理研)、柿崎(東大物性研)、若槻(KEK-PF)、

議事内容

1. 上坪委員長より、今回の委員会で議論すべき議題について説明があった。
放射光施設のグラウンドデザインの骨格として
(1) 大型施設
Spring-8、VUV-SX高輝度光源、KEK-PF将来計画、FEL
(2) 地域的研究拠点など
(3) 施設運営利用のネットワーク化を考えていただきたいこと、また個々の計画 の取り扱い、放射光利用研究推進のためになすべき「ソフトウェア」の内容について も意見を出していただきたいとの発言があった。このうち、VUV-SX高輝度光源に関し ては、補正予算が通らなかった。東大、東北大の両者が計画を持っているという状況 は変わっておらず、中途半端であるが、引き続き、両大学とKEKの3者の検討会議に おいて議論がされている状況が報告された。

2.上坪委員長より、本日午前中に開催された3者検討会議の内容に関し、説明がな され、松下、尾嶋委員より補足説明があった。上坪委員長を委員長とする光源仕様に 関するレビュー委員会では、日本で一つという光源を作るに当たってはどうしてほし いかという提言を行った。計画を推し進めて行くには一本化したまとまったものにな ることが必要であり,そうなれば文部科学省内や省外への説明説得も力強くなれる. 今後、柿崎東大物性研SOR施設長を委員長とする、3者検討会議の下に置かれた作業 部会に、当事者以外の外部の専門家を加えたナショナルチームを作り,3月を目処 に、ユーザーの要望をできるだけ取り込んだ統合計画で実現可能な案をとりまとめる ことになっていること、その後、設置場所、設置形態の検討を行うこと、その一本化 が不可能だった場合には、これまで通り、東大と東北大からそれぞれの概算要求がな されるであろう事、等が報告された。

3.松下委員より、KEK-PFで検討している将来計画が報告された。
(1) PF-ARについては現在高度化が進んであり、2002年度より稼働。
(2) 2.5GeV PFについては直線部増強計画を推進する。2004年度ぐらいには稼 働状態に持っていきたいと考えている。直線部が現在の7本が14本に増える予定で あるが、それぞれの挿入光源がどのエネルギー領域をカバーするかについてはVUV-SX 高輝度光源が実現するか否かにかかっており、両方の場合を想定して所内で検討して いる。
(3) 新光源については蓄積リングとEnergy Recovering Linac (ERL)の両方を検討 している。蓄積リングについてはPF IIをかつて提案したが、もう少し先端的なデザ インにすべきだと考えている。ERLについては神谷加速器研究施設長とKulipanov氏が 検討をし、いくつかの案がでてきている。Feasibilityを考え、両者をミックスして 第1段階では蓄積リングを、第2段階ではERLをといった案もでてきている。200 5年度ぐらいから建設を開始し、2010年度ぐらいに稼働状態に持っていければと 思っている。その際にはARと2.5GeVリングをシャットダウンする。
(4) X-FELについてはマンパワー経済状態などの問題もあり、Spring-8で建設が始 まったことも考慮し、KEKとしての関与の仕方を検討中である。
(5) PFのスタッフは、方法論や装置開発をする、ルーチン的測定への支援、自身 の研究を活性化し放射光研究の有効性を社会に示すという義務があるが、今後は最後 のテーマを重点にしてやっていきたい。
(6) 光源系のスタッフについてはマンパワーが絶対的に足りない。加速器研究施 設との連携を視野に入れている。以上の説明に関して質疑応答がなされた。
Q:蓄積リングとERL両方を検討しているようであるが、feasibilityを考えて。概算 要求の段階での優先度はどうか?
A:ERLに関しては減速Phaseをうまくやるために相当のR&Dが必要と考えている。現段 階ではそのことも考慮し、第1phaseで蓄積リング、第2phaseでERLが入るような案 の検討をしている。
Q:現在高度化を図っている、AR, 2.5GeV ringを2010年程度でシャットダウン するという計画は短すぎないか?またそれらの部品を新光源で再利用することは考え られないか?
A:2010年というのは新光源がいつスタートできるかにかかっている。また、磁 石などは難しいと思うが、極力再利用などについても考慮している。
Q:新光源のうち、蓄積リングの特徴、位置づけは何か?Spring-8がある現在、その 意義付けが難しいのではないか?
A:ご指摘の通りであるが、放射光分野というのは、地域性(関東のユーザーの利便 性)、Spring-8より低いエネルギーであることを生かした研究、より高精度、短時間 で測定したい場合など(利便性)も重要な要素であり、そのことに加えて新光源なら ではの特徴をアピールする必要があると考えている。

3.北村委員より、Spring-8で2001年度よりスタートしている軟エックス線自由 電子レーザーの計画について説明があった。5年計画で、36オングストローム、 1.9GWの発振を目指している。第1段階では150オングストロームの発振を目指 す。
この報告を受け、我が国としての自由電子レーザーの開発、利用をどう捉えるかにつ
いて意見が交わされた。
D:利用できる人をアサインしてほしいという要望が出されている。
D:放射光だけではなく、レーザーを利用している研究者たちにも声をかければよ い。11/19-11/20にかけて、コヒーレント光の短期研究会が物性研で開催 されたが、その参加者など。
D:世界で開発されている、ほとんどのFELはリニアコライダー開発のパラサイトで ある。実験スペースの問題や、Linac特有の不安定性、ジッターに対する要求など、 ユーザーサイドがもう少し関われる環境を作るべき。
D:BESSY IIでは、利用を視野に入れたX-FEL計画が予算化されたようである。
D:JLCにしても、KEKのサイトではスペース、地盤などの問題で難しいかもしれ ない。高エネルギーグループでは近々サイトやコストのアサインをする予定である。 それへの関わり方(高エネルギーコミュニティに協力するのか、専用のを作るの か)、検討が必要である。
D:ERLも放射線の問題など、日本でR&Dをやっていくのはなかなか難しいのではない か?

4.上坪委員長より、地域利用型の施設について意見を求めたい旨の発言がなされ、 その例として、谷口委員より、HiSORが、小杉委員よりUVSORの実状と考え方が紹介さ れた。

広島大学では規模も小さく既存の全国共同利用施設とは必然的に性格が異なる。中 国、四国地方での地域連携はもちろんであるが、カバーする波長領域のこともあり、 固体物理学を中心とした分光に力をおいた運営をして特徴を出そうとしている。20 02年度から大学付置センターとして、全国共同利用施設になる。

分子研UVSORは、かつては、西日本のユーザーをカバーすることにも力を注いでいた が、いろいろな施設が整備されてきたので、今後はより一層、化学を中心とした運営 に力を入れていく。光源の高度化については平成14年度にすべての予算が手当され た。ビームラインに関しては競争的資金を獲得して整備していく。高輝度光源が実現 した際には1本程度の専用ラインを建設したいという希望があるが、今は計画の推移 を眺めている。新光源計画については1GeV程度のあくまで分子研の一施設としての適 正規模を保ったものを提案し、高度化後10年間程度の成果に基づいて実現を目指し たい。

5.上坪委員長より、各放射光施設の有機的連携、若手養成の仕方などについても報 告書に組み込みたいとの発言があった。それに関連し、小林委員より、特に加速器の 分野ではR&Dをうまく継続できる環境が必要で、人材育成をもっと真剣に考えるべ きであるとの発言があった。

6.以上の意見を参考にし、上坪委員長、太田会長が特別委員会報告書の骨格をま とめることとし、各部分については、それぞれの計画に関わっている委員が2月末を 元に報告書の素案を練ることとした。