第8回 日本放射光学会将来計画検討特別委員会議事録


日時:平成14年8月31日(土) 13:30?16:00
場所:東京大学理学部化学本館5階会議室

出席者:上坪(JASRI、委員長)、太田(東大理、学会会長)、尾嶋(東大工)、渡辺 (東北大多元研)、小林(KEK-PF)、柿崎(東大物性研)、菅(阪大基礎工)、若槻 (KEK-PF)、雨宮(東大工)、坂田(名大工)、谷口(HiSOR)、宮原(都立大 理)、佐藤(東北大理)、河田(KEK-PF、学会行事幹事)、木下(東大物性研、学会 庶務幹事、オブザーバー)、西野(学会事務局)
欠席者:松下(KEK-PF)、小杉(UVSOR)、下村(原研)、藤井(東大物性研)、石川 (理研)、北村(理研)

議事内容

1. 上坪委員長より、本委員会は1月に開催された第7回からしばらく間があいてし まったが、本年中に報告書をまとめたいので、協力をお願いしたい旨挨拶があった。
木下学会庶務幹事より、第7回委員会の議事録(学会誌5月号{vol.15-3}に内容は掲 載、ホームページにも掲載予定)の朗読があり、これまでの議論の確認を行った。

2. 柿崎委員より、極紫外・軟X線の高輝度光源計画に関するその後の経緯に関し
て、配付資料に基づき、報告があった。
 第7回委員会と同日に開かれた東大、東北大、物構研三者検討会議において、拡大 作業部会の設置が提案され、オールジャパンとしての光源仕様策定が熊谷教孝氏 (Spring8)を世話人とするワーキンググループにより開始された。1月28日から 3月22日まで、6回にわたる会合が開かれ、仕様がまとめられた。その間2月22 ,23日の両日東大物性研を会場として開催された研究会「極紫外、軟X線高輝度光 源の実現へ向けて」におけるユーザーとの意見交換を経て仕様策定がなされた。その 後、3者検討会議において、建設候補地(柏、富沢、KEK)の比較表とともに、文科 省に提出された。5月21日には最終案が取りまとめられ、文科省ではそれを受け 取っている。このように、光源仕様に関しては、オールジャパンで統一案が策定され ており、建設候補地に関しては行政サイドの判断で決定される予定である。東北大、 東大でそれぞれ独自に概算要求が出ている状況は昨年度と同様である。
 さらに光源仕様の具体案、利用計画やビームライン仕様に関してのデザインレポー トを取りまとめるため、それぞれ熊谷教孝、谷口雅樹(広島大)、柳下明(物構研) の3氏を世話人とするワーキンググループが開催され、すでに取りまとめは終了し た。近いうちにそのデザインレポートが出版される予定である。

以上の報告に関し、質疑応答が行われた。
Q: 平成15年度の概算要求が、それぞれ東北大、東大から出されているとのことで あるが、その状況は?
A: 東北大からは、昨年と同様の、東大からはワーキンググループのまとめを踏まえ た概算要求が出ているが、その状況に関しては不明である。行政の判断を待ってい る。
Q: 光源仕様のハードや、利用研究などに関しては統一した案を提案しているとのこ とであるが、運営組織などはどうなっていうるのか?
A: それはどこの候補地に施設が建設されるのか、そのサイトに依存する。
D: いずれにしても、外部の人材の建設、その後の運営への協力が不可欠である。

3.河田委員より、物構研の将来計画の検討状況に関する説明があった。

 PFのアクティビティは、Spring-8稼動後も依然として重要であり、それを踏まえて 以下の提案をPFシンポジウムなどで行っている。(ホームページ、PFニュースアンド で少しずつ情報を公開している。)ただし、まだこれは緒についたばかりで、これか ら多くの議論を経てまとめていく予定である。独立行政法人化に際しての、中期計 画、中期目標策定の問題もあり、本年中にまとまった形にするよう、所内でデザイン スタディ、および研究に関するケーススタディを行う作業グループを組織した。
第1段階は、PF2.5GeVリングの直線部増強計画である。すでに部分的にはその計画が スタートしている。
第2段階として2007年ごろの建設開始を念頭におき、次期光源計画をスタートさ せる。そのコンセプトは、現在のPFのアクティビティの継続と第3世代を超える性能 (超高輝度、短パルス、コヒーレンス)の両立である。
その為に、エネルギー回収型ライナック(ERL; 1?4GeVまで、4ターンで加速するも の)と4GeVの高輝度蓄積リングを組み合わせたものを考えている。
最初の段階ではERLは1mA程度の低電流運転での利用を考える。ERLを入射器としても 利用する。又次のステップに向けたスタディも行う。
次の段階(100mA運転が可能になった段階)で、蓄積リングもERLの一部として用いる。 0.01nmradをきる超低エミッタンス、数?数十psの短パルス利用、蓄積リングの数 十?数百倍の輝度、100?1000倍のコヒーレンスを利用した、物性などの時間 構造の研究、顕微鏡、ホログラフィーなどでの発展が期待できる。生命科学の分野で は、これまでの結晶構造解析から単分子の構造解析、分子同士の相互作用の研究の可 能性が開け、最先端と言うばかりでなく、ユーザーの広がりも期待できる。
しかし、実際に計画を実現させるためには多くのFeasibility studyが必要で、今後 多くの作業を行っていく。

以上の説明に関し、質疑応答が行われた。
Q: 外周を蓄積リング型でスタートさせることで、ERL単独の場合に比べ、コストが 増加しないか?
A: いろいろなスタディ、検討を行って、コストを下げていくことを考えている。
Q: 昨年まで議論されていたPF IIはどうなったのか?
A: あれも、いわゆる一つの提案であって、具体化にいたるものではなかった。今回 のもまだ提案の段階であるが、独立行政法人化の動きもあるのでもう少し力を入れて いる。
Q: この委員会で検討されている、紫外・軟X線の高輝度光源計画とは干渉しないの か?
A: その後にくる計画であり、干渉はしない。
D: 独立行政法人になったあとの、中期目標達成度の評価の際に、開発的要素とそ うでない部分を切り離しておいたほうがよいのではないか?開発的な部分を期限を区 切って評価されると厳しい。
D: 現在のアクティビティも継続させるために、蓄積リング併用案になっているが、
放射光コミニュティの外を説得するためには、多数が使うからと言う論理は通用しに くい。最先端の研究を行うと言う切り口で必要性を訴えるほうがよい。
D:ERL4ターンで本当に数psが実現できるのかなど、まだまだFeasibility studyが必要である。
D:本委員会としては、ERLと言う具体的なハードの名前を出した報告結果を出さ ないほうがよいのではないか?放射光コミニュティとして、今後どのような光が必要 なのか、第3世代の次に必要な光はなんなのか?どのような研究がそれによって開け ていくのかといった観点からまとめたほうがよいであろう。おそらく短パルス、超高 輝度、コヒーレンスの利用といった切り口になると思う。そのためのR&Dが必要で あると言うまとめ方ではどうか?

4.以上の議論を踏まえ、上坪委員長より、本特別委員会の報告書のまとめ方につい て以下のような提案があった。この提案をもとに各委員が分担して草案を2ヶ月程度 で作成し、11月ごろ開催予定の第9回の委員会において、その内容について議論す ることとした。

報告書の構成案
タイトル(例) 我が国における放射光科学発展のために
        10年後のわが国の放射光科学はどうあるべきか
        我が国における放射光科学将来計画

第1章 検討の背景:放射光の歴史、わが国の放射光科学の発展、世界の現状
第2章 なぜ必要か?:放射光が拓く科学技術、特に強調すべき発展の方向
第3章 どんな施設が必要か?:
第4章 ハード面での整備:共同利用施設、地域センター、学内センター、固有施設
第5章 ソフト面での整備: 各施設の有機的な連携、新利用領域の開拓、人材育成、
第6章 終わりに