会長挨拶

日本放射光学会会長

朝倉清高


  2019年10月 1 日より 2 年間、日本放射光学会長を務めることになりました。平成の世の始まりとほぼ時を同じくして、 放射光学会は誕生しました。この令和の時代にも、培われた伝統を活かし、さらなる発展が期待される放射光科学に対して、放射光学会長として,微力ながらお役に立てればと思っています。そのために,放射光施設のさらなる進展への協力、放射光ユーザ全体との対話、国際協力と若手育成の3点を柱に活動したいと考えています。

  放射光科学は、加速器という大型施設を利用し、施設を中心に進んでいることは言うまでもありません。しかし、放射光施設をひとくくりにして議論することは、施設のそれぞれの特質を損ねる恐れがあります。小杉前会長が示された、それぞれの施設の主任務に基づく3つの区分(最先端、民間利用、大学共同利用)を基本に、各放射光施設との意見交換を進め、放射光施設の将来計画に、学会としてどのような協力ができるかを継続して検討していくつもりです。施設間の意見の相違についても調整が必要になるかもしれません。日本全体の放射光科学の発展の立場から、各施設,学会員とよく協議し、学会の役割を果たしたいと思います。一方で、放射光を利用した知識の蓄積と活用というプロジェクトも施設ごとでその取り組みが始まっています。こうした施設間の活動を結びつけ、だれでも利用可能な共有財産へとする流れを作り上げることを計画しています。

  さて、よくユーザと施設スタッフという言い方がされます。放射光学会はこの両者の立場を超えて日本全体の放射光科学について考える組織です。一方,放射光ユーザは必ずしも放射光学会員ではありません。放射光学会は、放射光コミュニティーの核として、放射光コミュニティーをリードし、新しい放射光科学を創造してきました。今後放射光は、さらに一般の科学者、技術者に使われるようになります。こうした方々との意思疎通は放射光学会にとって一層重要になるはずです。一つの方策として、各施設のユーザ団体との対話を増そうと思います。放射光学会の年会にこうした方々が参加しやすい仕組みを作り、取り込みを図るつもりです。

  現在東北で新第3世代リングが立ち上がろうとしています。この計画の実現は放射光学会にとって、その真価が問われる重要な事項です。この事業を推進されている方々とよく対話をとり、放射光学会にとって極めて重要なこの計画を支援できればと思っています。

  放射光学会のもう一つの顔は、日本の放射光コミュニティーの代表であるということです。放射光は世界各地にあり、そのユーザ間の連携は重要な課題です。特に、アジア・オセアニア地区の放射光の発展に責任を持って取り組むつもりです。  

  最後に若手活動のサポートです。とくに、30代、40代の若手の方を中心にした20年後の将来像に関する議論のサポートをします。

  とある学会がスタートするとき、著名な先生の言が残っています。そのお言葉を借りて、本稿を閉じます。

“腹蔵なく胸襟を開いて愉快に語り合う場が学問分野の発展に重要である。”

  皆さんとともに、明るく開かれた楽しい放射光学会をさらに発展させたいので、ご支援どうかよろしくお願いします。